第12話_無自覚に及ぶ余波

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そんな日が何日も続くと、蒼矢(ソウヤ)の周囲の動向は少しずつ変化していく。 今までは教室の移動中に二,三声を交わす程度にとどまっていた同級生達との会話や交流が増え、昼休みもいろんな昼食グループから日替わりで誘われるようになる。 入学当初から徐々にその数を減らしていた他クラス・他学年の生徒達からの注目も再び向けられるようになり、勉強会や読書会、部活動などへの勧誘を毎日のように受けるようになる。 もちろんそれらは全て、影斗(エイト)が蒼矢に近付かなくなったことによるものだった。 蒼矢以外に在校生徒との交友関係はほとんど無かったものの、不良生徒・影斗の影響力は生徒達の間では絶大で、関わることで身の危険を案ずる者、内申に響くことを恐れる者など、彼ら側にも影斗を避けるような風潮があった。 そして前述通り、生徒の前では交流をオープンにしてきていたため、影斗の存在が単純に抑止力のようなものになり、蒼矢との距離も置かざるを得なくなっていた。 その"影斗"という(たが)が外れた今の蒼矢のもとには、元々彼と交流したかった者達が一気に群がってくる。 そしてそこにはやはり、彼の容姿や身体に興味を示す輩も混じっていた。 廊下を一人歩く蒼矢に、手前から上級生のグループが近付いてくる。 風紀委員会の先輩とその友人とわかった蒼矢は軽くお辞儀をする。 「髙城(タカシロ)、これから次の授業に移動?」 「いえ、戻るところです」 「じゃ、戻る前に俺らの教室寄っていってよ。ぜひ読んで欲しい本があるんだ」 「はい」 蒼矢の返事を聞き、グループは嬉しそうに少し湧き立った。 左右を囲まれながら、蒼矢は彼らに導かれていく。通り過ぎていく生徒達の注目を浴び、蒼矢はなんとなく気恥ずかしさを感じ、うつむきながら歩く。 「…!」 ふいに、横にいた彼らの一人から、するっと腰に手を回された。 蒼矢は一瞬身体をこわばらせるが、見上げることができず、うつむいたまま彼のボディタッチを許してしまう。 (ぬる)い上級生の手のひらが、蒼矢の華奢な身体のラインを探るように、ゆっくりと這い回る。 「……」 言いようもない嫌悪感に襲われながら、蒼矢は黙って口を引き結んでいた。
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