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こちらの感想へそう素直に頷く影斗を見、鹿野は何かを察したようだ。
「…もしかして――興味持っちゃった?」
「んー。まぁそんなとこ」
「えっ」
からかい半分のつもりだったのに予想外の返答をしてきた影斗に、鹿野は目を丸くする。
「…一応聞くけど、式見てたのって…彼目当てだったの?」
「ああ。式の前に会って話したからさ。ついでに見とこうかと思って」
鹿野は、普段らしくない彼の行動に意表を突かれていたが、それよりも更に…そう話す影斗の表情に注視せざるを得なかった。
平静さを保ちつつ、改めてゆっくり質問する。
「…宮島…それってさ、ただの興味なんだよね? …恋愛対象とかじゃないよね?」
「んー…わかんねぇけど、いずれそうなるかも」
影斗は少し考えるそぶりを見せ、けろっと言ってのけた。
「え゛っ!? だって…男の子だよ!?」
そう返しつつも、鹿野は自分が核心をつけていることが解っていた。今日の影斗の機嫌の良さと、話していた声色のトーンや表情が、新しい彼女を作った時のそれと酷似していたからだ。
とは言え、年下の…しかも男子相手に恋愛感情など、百戦錬磨の"女好き"で通っている彼に湧くものだったのだろうか。
「君…女の子専門じゃなかったの?」
「関係ねぇよ。俺が会って触りてぇとかヤりてぇとか思った相手がたまたま今まで女だったってだけで、それが今回は男だったってだけ。元々その辺あんまりこだわりねぇのよ」
「!? ヤ……!?」
二の句が継げなくなってしまった鹿野に、影斗はにやりと笑ってみせる。
「…まぁでも、やっぱり今回は例外かもな。いつもよりだいぶ純粋」
「? それってどういう――」
「っと、そろそろ行くわー」
「どこに!?」
「迎えだよ、蒼矢の。出待ちならぬ来待ちっ」
そう言い残すと、影斗はコーヒーをぐいっと飲み干して鹿野の前にカップを置くと、さっさと化学準備室を出ていった。
残された鹿野は、黙ったまましばらくドアの方を眺めていたが…身体を反り返し、頭に手櫛を入れた。
「え~…いや、ちょっと待ってよ…、 問題児なんだから、これ以上問題増やさないでよぉ…」
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