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俺は北海道の片田舎で小さな皮膚科医院を経営している。
茗荷冴月、39歳。
高齢の母が院長。
田舎ゆえ『院長』に対し、俺は青二才の『兄ちゃん』だ。
北海道にしては珍しい蒸し暑い夜だった。
スタッフが帰った後、俺は事務室で残務整理をしていた。
「母さん。冷房消すなよ。暑くて仕事できないじゃないか。」
母は俺の言葉を無視してパソコンに向かい『上海ゲーム』に夢中である。
俺は黙って冷房のスイッチを入れる。
それでも暑いので上半身、素っ裸になりパソコンにデータを打ち込んでいると、また冷房のスイッチが切れた。
「おいっ!いい加減にしろよ!」
「あら・・・私は消してないわよ。」
「えっ?おかしいなぁ・・・」
そう言って立ち上がり、俺は配電盤を見に行こうと廊下に出た。
すると非常灯しかついていない暗い廊下の奥に、白っぽい服を着た若い女の姿がボーッと浮かび上がっている。
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