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寺院の境内の影で休む五人の少女達
彼女達は全員見習い陰陽術師である。親の会合の為、たまたま連れてこられて集まった子供達だった
ふと横を見ると夏の太陽がギラギラと道端を照り付けて、湯でも沸かせそうなほどの灼熱を想像させる陽炎がユラユラと空中で蠢いていた
「暑いね…」
「うん…次はどこで遊ぶ?」
「外は自殺行為だからやっぱり建物の中でしょ」
「建物の中か、例えば?」
「…倉庫とか」
「倉庫か、いいね!なんかお宝眠ってそう」
「えー…怒られるんじゃ…」
「バレなきゃいいの」
という流れで
各人は倉庫へと移動を始めた
寺院の倉庫は一昔前に建てられた物で、至る箇所でボロがきており、木造部分はささくれが酷い有様。鉄で構成された所は全て赤茶色く錆び付き、酷く劣化していて、少しの衝撃を与えれば砕けそうな代物だった
しかし正面扉には太い鎖や南京錠を用いた、強固な鍵が備え付けられてしっかりと施錠されていた
「およ…入れないよ?」
「こんな廃墟に鍵なんかかけちゃって…しかも二重かよ」
「あっ………ここから入れるかも…」
1人が木造部分の壁に小さな隙間を発見した
小学女子ならギリギリ通れるか通れないかの隙間
周囲の板がボロボロになっている為、掴んで引っ張ったり、足で蹴ったりすれば簡単に破壊する事ができたので、ぶっ壊し押し広げながら中に進んで行く事にした
子供なら何をしても許されるという甘い考えを持っての所業だった
中に入ると、意外と綺麗に整頓されていた事に皆が驚いた
「うわぁ〜…」
「すごい…」
数々の虫の標本やあらゆる書物、よく分からない薬液の入ったガラス瓶が無数に棚に並べられ、見た事のない器具や、骨格標本が配置されていた
最早小さな博物館である
カビ臭さとホコリっぽさが無ければ文句の付けようがない建造物だっただろう
5人は中の光景に夢中になり、好き勝手に数々の配列品に触れていった
その中の1人が【睨鬼阨】という甘い蜜の入った壺を手にして、その蜜をなめて声を上げた
「うわっ、すごいすごい!みんな!」
「なになに?」
「これ…なめてみて?」
差し出された壺の中から褐色いろの蜜を人差し指ですくい取り、5人全員が口へと運んだ
褐色の蜜はほっぺが落ちそうなほど甘くて、舌が溶けてしまいそうだった。自然と頬が緩む
あまい…美味しすぎる…
今までに経験した事がないような甘美な味に驚愕した。だが、驚きはそれだけではなかった
ふと、自分の手元に目をやると、小指に何重にも巻かれて結ばれた赤い糸がはっきりと見えた
「こ、これって…」
顔を上げて周囲の状況を確認してみると
他の4人の小指にも赤い糸が付いているのが見えた
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