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▽▽▽
そのランタンは淡い緑色をしていた。
風に吹かれて灯火が消えないように、黒マントの内側へと隠し持つ。
岩場に囲まれた場所で焚き火をたいて夜を越す予定だ。
「羊が二十三匹、羊が二十四匹……なあ、チコ。数えた羊がどこへ行くか知っているか?」
「知りません。興味ありません。おやすみなさい」
俺はまぶたを閉じたまま、師匠に言葉を返した。
「柵を越えた先には何があると思う?草原か?それともまた柵か?それとも…」
「そんなことを考えているから眠れないんじゃないですか?」
呆れながらも薄目で師匠を見た。
彼は黒マントを掛け布団がわりにして、天を仰いでいた。
視線の先をたどる。満点の星が輝いていた。
「なあ。一緒に羊がどこへ行くのか考えようぜ」
「嫌ですよ。さっさとこのランタンを届けたいんですから」
「真面目だなあ」
「師匠が不真面目なんだと思いますよ。今度こそおやすみなさい」
目をつむる。師匠がまた羊を数え始めた。
考えたくもないのに、脳内で柵を飛び越える羊が浮かぶ。
その先を想像する前に世界は暗転した。
▽▽▽
「この度はお悔やみを申しあげます」
「この死神が!私の息子を返しなさいよ!おまえたちがもっと早くについていれば、息子は死なずに済んだんだ!」
「こちらが息子さんのランタンになります」
緑色に輝くランタンをそっと差し出した。
目の前の婦人はそれを震える手で受け取る。
「あ…ああ…あああっ」
ランタンを抱き抱えたまま、婦人は泣き崩れる。
そのまま背を丸め泣き始めた。
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