4人が本棚に入れています
本棚に追加
命々屋は忌み嫌われるその性質から、貰う賃金はかなり高い。
罵声を浴びせても良いという暗黙の了解みたいなものが存在しているせいもある。
戦が起こるのもそこに赴く理由も直接、俺たちには関係ないのに。
こうも毎回、いわれのない罵声を浴びせられ続けたら、人格形成に歪みが生じてしまいそうだ。
相容れないものがある限り、この世界の戦はなくならないだろう。
そして俺たちの仕事もなくならない。
次の戦場に行く前に小さな町の宿屋に寄ることにした。
「俺の後継者はチコしかいないんだよな」
「何ですか?いきなり」
「いや、俺が死んだら色判断は誰がやるんだろうな。チコ、おまえーー」
「必要ないです。やりません。無意味ですから」
「人の話を遮る癖を直せ!大人の俺でもいじけるぞ」
人差し指と人差し指をツンツンとつつきながら、唇を尖らせている。
師匠はもう五十だというのに、子どもっぽさが抜けていない。
ベッドのシーツのシワを伸ばす。
それからテーブルに並べて置いてあるたくさんのランタンを見た。
命の灯火が灯されていないそれは冷え冷えとして見えた。
灯火は人によって色が違う。
師匠の言葉を借りるならば、性格によってかわるらしい。信憑性のない情報だ。
「羊が二十六匹…」
師匠は今日も羊を数えている。
おやすみなさい。そう口にして寝た。
最初のコメントを投稿しよう!