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「そのランタンは白だな。色判断だと白は光だ。すべての色を混ぜたものになる。受け入れる強さ、強い意志をもった人間だったんだな」
「…そうさ。こいつは光だった。戦にビビっていた俺とは違って強かった。家族のため、国のために戦うんだって意志があった」
〝だった〟〝あった〟などと過去形で話していることに気づき、男は地面に膝をついた。
「このランタンは俺から届けたい」
「何を言っているんですか。それは俺たちの仕事です」
そう言うと、男はきつく睨んできた。
それから、師匠の方を見る。
「あんたならわかってくれるだろう。〝仕事〟なんて言葉でくくられたくないんだ。そんな言葉で彼女まで傷つけて欲しくない」
「わかった」
「師匠!」
肩に置かれた手を払うと、師匠を真正面から見た。
「これは命々屋に課せられた仕事です。そう簡単に他人に……」
「黙れ!」
いつも人の言葉を最後まで聞けといじけている人とは思えない。威圧感のある声に怯む。
「あんた。それを持っていきな」
「代金はここに置いておく。それと、これは化膿止めだ」
男がランタンを持って去っていく。
師匠が膝から崩れ落ちた。慌てて支える。
「早く手当てを」
「なあ、チコ。これからも命々屋でやっていきたいか?」
「話ならあとでいくらでも聞きますから、それよりも今は手当てをすぐにしなければ!」
「答えろ」
答えないと動かないと言わんばかりだ。
怒らないことも仕事の内に入ると言われている。
いつも怒りをぶつけられて、賃金がよくなければやっていないと思う。
それだったら、他にも収入はよくて精神面も穏やかでいられる仕事はいくらでもある。
何故、俺は命々屋に?
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