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「だんまりか。俺と行動していればわかると思っていたんだけどな」
しみじみと言われる。
「おまえ破門な。すぐに答えられないようじゃ、命々屋には向いていないわ」
「え……」
師匠は俺から離れると、一人でよたよたと歩いていく。
「し、師匠!何かの冗談ですよね?だって、師匠は一人じゃ焚き火もたけないじゃないですか!野宿するのも大変だと思いますよ?俺がいるから助かっている部分、たくさんあると思いますよ?」
チラリ、と視線が送られる。
その冷ややかさに口元がひくつくのが自分でもわかった。
「わかりましたよ!どうぞご自由に!あとで有能な弟子を失ったことを後悔すればいいんです!」
背中を向けると反対方向へと早歩きで進む。
ドカドカと音が鳴る。
師匠なんか知るものか!ケガをしたのだって知るものか!
気づくと森の中を歩いていた。
「荷物…ほとんど、宿に置いてきてしまった」
あんな啖呵を切ったけれど、後悔しているのは自分かもしれない。いや!違う。
俺は普段通りに仕事をしただけだ。
ちょっと言葉につまったからってあんな風にいきなり破門だなんて……俺、本当に破門されたのか?
今から宿屋に戻れば、いつもの師匠に戻っている可能性は?
「ないだろうな」
ふと、視界に白いものが映る。
羊だ。脚が変な方向に折れ曲がっている。
地面も赤黒く染まっている。
周囲を見渡す。崖が見えた。あそこから落ちたのか?
倒れている羊に近づく。
触れてみる。温もりは一切なく、既に息絶えているのがわかった。
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