犯罪日記

17/21
前へ
/250ページ
次へ
「社会が性犯罪者に向ける目は冷たいんだよ。しかも未成年の少女への犯罪だ。ニュースを見る全ての人が未成年だった期間を経験し、その中には子どもを授かった人もいるだろう。彼らは自分が被害者になった時のことを想像し、自分の子どもが被害者になること想像してニュースを見るんだ。そんな人たちにとってお前は憎しみや怒り、嫌悪感以外のどんな感情で注目されると思うんだ?」 五十嵐がそう言っても近藤はへらへらと笑っていた。 「でも僕を見るだろう。僕の生い立ちを想像し、僕がなぜ犯罪に手を染めたのか報じる。でもその多くは嘘ばかりだ。僕の気持ちは僕にしか分からない。だけど彼らは僕の気持ちを想像したがる……。面白いじゃん。好き勝手なことを報じればいい。世の中には僕みたいな人間は山ほどいる。僕に影響されて実際に行動に移す人も現れるかもしれない。僕が社会に影響を与えるんだ。みんなもっと危機感を持って生きるべきだ。いつも誰かに見られてる…そんな危機感を持って生きるべきだよ」 近藤はそう言って五十嵐の手を払った。 そして尚も笑う。 五十嵐が呆れて野本を振り返ると、野本もまた五十嵐を黙って見ていた――。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

322人が本棚に入れています
本棚に追加