犯罪日記

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彩羽はそう言い捨て、ソファに横になった。 納得のいかない事ばかりだ。 月影雪は親に傷つけられて死を選んだ。 生田美代は近藤の豹変に驚いて命を落とし、二人の少女は衰弱した状態でなんとか救われたが今も入院を余儀なくされている。点滴で栄養を摂ることから始まった治療は長くかかるらしい。 あんなイカれた男のために少女たちは傷つき、親のせいで命を絶ったまだ若い月影雪が気の毒になる。 そして、ふと架音と美乃梨を見て彩羽はため息を吐いた。 そういえばこの二人も親に傷つけられた二人か…と、気が付いた。 静かな足音が近づいてくるのが聞こえると、彩羽はソファに座り直した。 朱里がボストンバッグいっぱいに詰めた荷物を持ってリビングにやってきた。そしてその場に正座して彩羽の前で深々と頭を下げた。 「いろいろお世話になりました」 彩羽は驚いて辺りを見回した。この部屋に現在、家主はいない。姉の葉月は入院中だし、マリアは仕事に行ってしまった。今家を任されているのは彩羽だ。 「私か?」と、彩羽は自分の顔を指さして朱里に問いかける。 「他に誰が……?」 朱里も辺りを見回した。 ダイニングでは架音と美乃梨が顔を見合わせて首を傾げていた。 「いや…まあ、そうなるよね」
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