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サイレンの音が響く。
オレンジ色の明かりが肌を温める。時折影が明かりを遮り、誰かが身体を揺する。
――葉月!!しっかりして!!目を開けなさい!!
マリアの声だ……。なんとなくそんなことを思いながら、痛みに顔を歪めた。
自分を刺したカオナシが脳裏によぎった。
刺した後、あいつは踊りながら去って行った。
いつもなら体型や歩き方を見れば記憶の中の人物と照合できるのに、あの揺れるマントが邪魔をして特定できない。
知っている人物だったのだろうか、それとも知らない相手か。
いや、むしろ知らない相手ならなぜ自分を狙ったのだろう。
ああ…考えなくても答えは簡単に出る。
播磨伊織の姿は知っている。愛音から身長や体重に至るまで細かく聞いていた。きっとさっき自分を刺した相手が播磨伊織なら、その体型で気付いただろう。
しかし、播磨伊織には相棒がいる。播磨伊織の相棒が誰なのか、それは誰も知らない。あのカオナシが播磨伊織の相棒だとすれば…納得できる。
再び遠のく意識の中、そんなことを思った。
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