孤独な入院生活

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――2021年7月はじめ。 緊急事態宣言が明け、北海道内の感染者数は二桁まで下がった。気温も上がり、夏日を記録する日も少なくはない。 「暑い」 葉月はベッドの上で布団を蹴り上げた。布団が足元まで下がると、ほっと息を吐く。 「病院ってなんでこんなに暑いわけ?」 入院すること自体が初めてだった葉月は、何度か彩羽の付き添いで病院には来ていたから病室の気温が少し高めに設定されていることは知っていた。が、ここまで暑いと嫌気がさす。 病院内には高齢者の方も入院していれば関節痛などの持病を持った患者も多い。高齢者は特に寒がりで、関節痛に悩む患者は寒さに弱い。それに病人は動かない。そのため病室の気温は少し高めに設定されているのだ。 しかし葉月にとっては汗を掻くほどの気温だ。 みんなが差し入れしてくれた漫画の本も読み飽きた。何度か売店で小説を買ってみたが、読む気にもならない。仕方なくマリアに頼んでノートパソコンを持ってきてもらったが、刺された脇腹が痛くてベッドを起こすこともできなかった。 結局何もできなくて、しかたなくスマートフォンで有料動画サイトを開き、ドラマを見始めた。 病院はフリーWi-Fiが設置されているため、気兼ねなく動画を見ることができる。
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