5人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
俺の娘は明日、嫁に行く。
二十五歳だ。決して早いとは言わないが、この国では早い方だとも言えなくもない。まあ、俺にとっては、いつでも、いつだって、早いのだが。
百合は、人見知りな子だった。俺にも人見知りするくらいだった。
それは年少さんが終わって、年中さんの新しいクラスになって数日の事。
「幼稚園行きたくない……」
まわりのお友達より少し小さな体格の娘ちゃんは俺に涙ながらに訴えて来た。
「どうしたの?」
娘ちゃんは、新しいクラスに馴染めないでいるのか、ウチの娘ちゃんなら、そんな感じかと思いを巡らせ聞いてみる。
「バスでママにお別れすると涙が出ちゃうの」
娘ちゃんは幼稚園のバスで通っていた。
近くの通りまでママと一緒に向かいそこからバスに乗る。
バスに乗り込んだ娘ちゃんは窓から手を振るママを見下ろし、その瞬間に涙が出て悲しくなるのだという。
最初のコメントを投稿しよう!