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娘ちゃんは、家から大学に通い、幼稚園の先生になった。
あの、いつも走り抜けていた園庭を大人になった娘ちゃんは子供達と一緒に楽しく走り抜けていた。
そんな、娘ちゃんがある日、男を連れて来た。
何を思ったか男を家に連れて来た。
「百合さんの事を大切にします。百合さんを悲しませるようなことは絶対しません。いつも、笑顔でいられるようにします。だから、僕との結婚を許してください」
何処の馬の骨ともわからん奴が俺の前で頭を下げた。正座をして頭を下げている。
そもそも馬の骨ってなんだ?
良く分からないが言ってみたかっただけだ。
反対する理由が思い浮かばなかった。
全身、2万個くらいピアスでもついていたら、やめた方が良いんじゃない?って言えるのに、見たまんま真面目そうな、ちゃんと会話のできる好青年を連れてきやがった。
どこか、どこか欠点を探さなければ……
全身スキャニングしている俺の視界に、その馬の骨の後ろで正座して涙を流す娘ちゃんが視界に入った……
少し微笑んで、でも、どこか物憂げな目をしてまっすぐに瞳から涙を落とす娘ちゃんの姿が俺の視界に入った。
俺は、娘ちゃんが喜ぶことをしてあげたくて、今まで頑張ってきた。涙を見たくなくて今まで頑張ってきた。幼稚園の頃から、初めて会った時から、それはずっと変わらない。
でも……娘ちゃんにも大切な人が出来たんだな。馬の骨が吐いたセリフにグッとくるものがあって嬉し涙を流したんだ。
それは……俺も喜ぶべきことなんだね。
俺は、頭を下げる馬の骨に、
「どこに出しても恥ずかしくない自慢の娘です。どうぞ、よろしくお願いいたします。
俺は百合を3歳から育ててますが、本当の娘だと思ってずっと今まで育ててきました。
いつも百合を幸せにしてきた自信があります。
だから、どうか、俺よりも百合を幸せにしてください」
頭を下げた。
「パパ……ありがとう……大好き……」
大粒の涙を流して娘ちゃんは俺にそう言った。
娘ちゃんの結婚が決まった。
娘ちゃんは結婚する。
自慢の娘だ。
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