心霊スポットへ

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心霊スポットへ

ジメジメと体に纏わりつく湿度が鬱陶しい梅雨の時期。 俺達は地元で有名な心霊スポットに来ていた。時間は深夜十二時。 高校を卒業と同時に逃げるように地元を離れ、東京の大学に通う俺が何故地元の心霊スポットにいるかと言うと、高校の同窓会があったのだ。 実家の母親から連絡を貰った時は、面倒で行くつもりもなかったのだが佐竹から連絡があり「会いたいから絶対に来いよ」と言われてしまった。 俺にとってたった一人の友人佐竹に言われると断りづらい。俺は佐竹に会う事を目的に仕方なく同窓会に出席することにした。 昔から友達を作るのが苦手な俺は孤独な学生時代送っていた。自分ではそれ程人に嫌われるような人間ではないと思っていても人は中身より先に外見も重要視するようだ。特に顔。 顔にコンプレックスを持つ俺はそれだけでもう希望はない。 もしかしたら、他の人達は自分が思う程嫌に感じていなかったのかもしれないが、自身が持つコンプレックスと言うものはうがった見方をしてしまうものだ。なので、いつも下を向き極力人との接触を避けた生活を送っていた。 でもそんな俺に声を掛けてくれたのは佐竹。明るく社交性のある奴だ。 佐竹とは小中高と一緒だったのだが、俺とは違いいつも佐竹の周りには誰かがいて楽しそうにしているのを俺は遠巻きに見ていた。そんな佐竹と高校が一緒になり、一人でいた俺にみんなと分け隔てなく話しかけてくれた時は驚きそして嬉しかった。あの時の気持ちは今でも忘れない。クラスにいても何処にいても、みんな俺の事を汚い空気のように扱ってるとばかり思っていた。ソレがあの日から変わったのだ。刑務所のような学校生活を変えてくれた佐竹の頼みは無碍に出来ない。 二次会、三次会と佐竹に誘われるまま飲み屋を梯子しテンションの上がった俺はもっと刺激を求め心霊スポットに行く提案をした。 心霊や都市伝説の類など全く信じていない俺がそんな事を言い出すとは・・酒も入っていたこともあるが、余程気分が良かったのだろう。 佐竹は、野郎だけで行くのはつまらないと言い夜も深い時間だというのにもかかわらず付き合っている彼女(由美子)を呼びだした。 丁度彼女の方も友達と飲んでいたという事もあり、その友達を連れて俺達と合流。連れてきた友達は八木と名乗り、今までに見た事がないぐらい目の覚めるようなの美人だった。 長い明るめの髪は緩くパーマがかかり、ハッキリとした目鼻立ちをした顔には控えめな化粧。服装もおとなしめで派手ではない。そんな地味な服装でも顔は、人目を引くほど綺麗なので逆にバランスが取れている。 俺が一目で気にいるのに時間はかからなかった。 俺達四人は、目的の場所までの距離を歩いて向かった。結構な道のりになるのだが、酔い覚ましにいいだろうと歩くことにしたのだ。 そんな時、等間隔に立つ電信柱に同じ紙が貼られているのに気が付いた俺は何気なく近くによって見てみる。 「おいこれ見てみろよ。探してますだってさ」 それは、尋ね人の張り紙だった。 小学校低学年位の坊主頭の男の子が、カメラの方を見て楽しそうに笑っている写真が大きく引き伸ばされ載っている。写真の下には、身長や男の子の特徴などが詳しく書かれ探してる人の必死さが伝わって来る。 「ああ。お前知らないの?毎年夏になると行方不明になる子供がいるんだよ」 「夏に?何で夏なんだ?」 「さぁな。夏になると俺達みたいに遊ぶ奴が多いんじゃね?で、いなくなる」 「やだぁ~!」 佐竹のふざけた答えに由美子ははしゃぎ笑う。 探している家族の人には悪いが、所詮他人とはこういうものなんだろう。 「ふ~ん。夏にねぇ」 何となく気になった俺はその場に立ち、楽しそうに笑う男の子の写真を見ていた。 「どうしたの?行っちゃうよ?」 先を歩く由美子が俺に声を掛ける。 「ああ」 明日は雨が降るのだろうか、身体に纏わりつく湿り気が濃くなったような気がした。
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