遅れたハッピーウェディング

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 そんな私に、娘が言った。 「お母さん、結婚式したら?」  まさか、こんな歳になって結婚式を挙げることになるとは思わなかった。  身内だけの、小さな結婚式。式場は、娘が予約してくれた森の中の教会。牧師役には娘婿が手を挙げてくれた。参列者は、娘の家族と息子夫婦。  ウェディングドレスは無く、娘と孫娘とで選んだ白いワンピース。ブーケは、自宅の庭で咲いていたアジサイ。なんとも、手作り感でいっぱいだ。 「まさか、この歳でこんな格好するとは思わなかったわ」 「そう? けっこう良い感じだと思うけど」 「おばあちゃん、かわいい♪」 「ありがと」  そんな会話をしていると、息子がなんとも言えない表情でやってくる。 「もう準備すんだ?」 「あんたは……。お母さんに、何か一言ないの?」 「一言たって……。こんな格好、授業参観でも見たことないよ」 「もう……」  弟の反応に不満そうにしながら、娘がその肩をバシッと叩く。 「お母さんのエスコート役、しっかりやってよ?」 「分かってるって」  姉には頭の上がらない息子は、頭に手をやりながら言った。 「父さんの着替えも済んだし、そろそろ行こう」  
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