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「その者を捕らえよっ!」
――ぎゃー! やっぱり!
「なに、侵入者か!?」
叫び声に反応した衛兵が飛んで来る。全員が杏に向かって刀や戟を向け、娘たちは悲鳴をあげ逃げていく。杏はあっという間に大男たちに取り囲われた。空気が張り詰める。
「ちがっ、その、これは、誤解です!」
「おのれ、何者!」
「召し捕らえよ!」
――まずいっ!
捕らえられるわけにもいかない杏は得意の武力で数人の兵を殴り倒したが、逃亡を図るも束の間、さらに集まってきた兵に囲われた。ここまで大人数だと流石の杏でも逃げきれない。
「貴様、何者?」
「衛兵が数人瞬く間に倒されたぞ。ただの娘ではない」
「北狄の間者か? 刺客か?」
「違います!」
杏はれっきとした華国生まれの娘で、逃げたのは嘘が暴露たからと思ったからで、混乱を巻き起こす意図はなかった。
せっかく禁城まで来たのに使命を果たす前に命の危機がやってきた。このままでは良くて捕らえられて牢獄行きか、最悪この場で処刑か。
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