一 選秀女

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白刃をきらめかせ今にも襲いかかってこようとする兵たちとじりじり間合いを取る。この人数相手では串刺しになるだけ、何か作戦が必要だ。作戦、作戦……。 ――はっ! 向こうの人垣の中に狐目の男を見つけた。杏(玉林)を見初めここまで連れて来た(はく)なら素性を知っている。杏は大声で叫んだ。 「白様! 白様っ! 私が侵入者ではないとこの人たちに説明してくださいっ! あなたに連れられて来た秀女候補で間違いないって!」 「誰だお前は? お前のような女、私は知らん」 ――がーん! 狐はある意味思っていた通り薄情な人間だった。 唯一素性を知る狐に見捨られてはもうどうしようもない。――こうなったら。わざとらしく衣の合わせから(ふところ)に手を差し入れると、兵たちは勢いを削がれ蹈鞴(たたら)を踏んだ。 「皇帝に会わせて! さもなければ全員木っ端微塵だわ!」 完全に自棄(やけ)である。何も出来ず殺されるくらいならば力尽くでも皇帝に会って直談判をした方がいい。
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