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階を登って来る人の気配を感じ、彼は姿絵を巻いて閉じる。
「――殿下、ご機嫌麗しゅう」
狐目の男は恭しく拱手し、型通りの挨拶をしてから言った。
「選秀女が間もなく行われますね」
彼は目を伏せて苦笑した。選秀女とは皇帝の妻を選ぶ試験。皇帝の妻の候補となるだけあって、国中から見目麗しい娘たちが集められる、後宮の一大行事。それは父の用事であって彼には関係ない。後に毒花か枯葉になるであろう娘たちに興味もない。
「陛下からも禁城へ好みの女子を見つけに来るよう言われているが、私はまだ女子を娶る歳ではないぞ」
「僭越ながら、殿下も十五歳。そろそろ真面目に考えられるべきです」
「そんな話をしにわざわざ離宮まで?」
いつも通り軽く聞き流そうとする彼の心は、次の一言で乱れる。
「殿下のその絵の娘とよく似た娘を見つけました」
相手の鋭い目が不自然なほど綻んだ。いつの間に姿絵を盗み見していたのかと警戒しながらも、訊かずにはいられなかった、どうしても。
「そんなに似ているのか?」
「秀女候補として禁城へ連れて参りますので、ご自身でお確かめになっては?」
「秀女候補……」
暴れ出した心の臓がいつまでもおさまらない。
幼い頃から長年想い続け、ついに?
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