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私は、この件を封印することにした。 元カレの浮気癖のおかけで、免疫ができすぎるほどできていた。 元カレの浮気が発覚したとき、元カレは開き直っていた。 私のほうが100倍彼に惚れてしまっていたから、私が別れると口にした瞬間この関係が終わってしまう。 それが怖くて、何度も繰り返される浮気を許すしかなかった。 それに比べ夫は、私に必死で謝ってくる。 あの日。 関東に初雪が降った、寒い冬の夜。 家に帰ると、夫が走り寄ってきて私をおもむろに抱き締めた。 「えな…本当にごめん。えなのこと傷付けて。世界で一番えなのこと大事なのに。なんてバカなことしたんだ俺はって、心底反省してる。」 そう言われて、正直嬉しかった。 いつまでも元カレの呪縛から抜け出せないでいた私が、ああ、この人はあの人とは違うんだと、ハッキリ認識した瞬間だったかもしれない。 私は、この人と幸せになると決めた。 この人なら、私を大事にしてくれる。 そう思って、一緒にいることを選んだ。 実際、夫は私を大事にしてくれた。 何をするにも私のことを一番に考えてくれたし、私がしたいことを自由にさせてくれた。 私はそれに甘えて、バイト先の人達と飲み歩いて遊び歩いて、ちっとも夫を大事にできていなかった。 副店長になって仕事の量も増えて大変になった夫を、思いやる気持ちも少しもなかった。 夫が寂しくて自分を好きだと言ってくれる人に逃げたくなる気持ちも、分からなくはない。 「許すことは多分一生無理だと思う。私にも悪いとこあったのは確かだけど、やっぱりとっても傷付いたし。今夜のことは、私多分死ぬまで忘れないと思う。だけど…私はやっぱりあなたと生きていきたい。」 そのときの、精一杯の答えを、口にした。 本当にそれでよかったのか分からない。 でも、このときはこれが最善だと思った。
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