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ある冬の夜。 夫はソファーでうたた寝をしていた。 夫が脱ぎ捨てた服を片付けようと持ち上げた瞬間、ズボンのポケットから小銭がジャラジャラと落ちた。   「あーあ」 小さな溜息を憑きながら小銭を拾い、それを夫の財布に仕舞うことにした。 ついでに、溜まったレシートを捨ててあげようと思い立った。 夫が時々溜まったレシートをまとめて捨てているのを見ていたので、ただの親切心だった。 レシートの束をバサッと取り出す。 おそらくいらないものばかりだとは思うけど、念のため捨ててはいけなそうなものがないか確認しようと、1枚1枚捲り始めた。     コンビニで買ったコーヒーのレシート、ドラッグストアで買った目薬のレシート、お店のバイトの子たちと飲みに行ったと聞いていた日のレシートも出てきた。 そうやって捲っていく私の手が、あるところで止まった。 これ… 何? それは、腕時計のレシートだった。 明らかに女物が売っているお店の。 明らかに、プレゼントとして買っている。 だんだん、手が震え始めていることに気付いたけど、レシートを捲る手を再び動かし始める。 そして、また別のレシートで手が止まる、 それはファミレスのレシート。 チキンドリアと、ハンバーグセット、セットドリンクバーが2つ。 人数は2人。 日付は… 夜中に突然出掛けていった日だ。 電話が鳴って、大学時代の友達から呼び出されたと言って車で出掛けて行った。 私の震える手は止まらない。 だってそのレシートは、その友達と会ったと言っていた地名とは全然違う地名の店舗の物だったから。 その日夫は朝方帰ってきた。 「アイツさ、仕事でいろいろうまくいかないらしくてさ。その愚痴聞かされてたらこの時間になっちゃってさ。俺は車だったから酒は飲めなかったけど、アイツは結構飲んでたから家まで送ってやったんだ。」 寝ぼけ眼でろくに返事も返せなかったけど、やけに詳しく話すなと、半分眠った頭の片隅で思ったのを覚えている。 今思えば、あのときの夫の様子は少しおかしかったかもしれない。
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