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『昨日はありがとう。会いに来てくれて本当に嬉しかった。昨日も言ったけど、私は本当に副店長のこと好きだからね。また2人でどっか行こうね。』 3行ほどの短いメールだった。 そのたった3行で、心の片隅でまだ信じていた夫への、疑念が一気に膨れ上がった。 “まさか“が、“やっぱり“に変わる瞬間だった。 私の心臓が、壊れるかと思うほど早く打ち始める。 胸が苦しい。 私はおもむろに立ち上がり、夫の寝るソファーの前で腰を下ろした。 夫の肩を揺らして、夫に声をかける。 「ねえ、起きて。」 「んー?うーん。何?」 「聞きたいことがあるから、起きて。」 「……んー。うん。……」 「…起きて!」 「!?」 私の不意な怒鳴り声に、驚いて飛び起きる夫。 「ど、どうした?」 「これ、どういうこと?」 私は持っていた2枚のレシートを夫の目の前に突き付けた。 夫は食い入るように2枚のレシートを見る。 だんだんと顔色が悪くなっていくのが分かる。 目が泳ぐ。 世の中の、浮気がバレた男は皆こんな表情をするのかもしれないと思うような、動揺した表情だった。 「こ…これは…、えっと…。」 「このレシートの日付の日、あなたは友達と飲みに行くって言って出かけたよね?そのとき行ったって言ってたのとは全然違う場所だよね?あと、この腕時計は何?明らかにプレゼントで買ってる感じたけど。」 夫はレシートから目を逸らし、何か言い訳を考えている様子だった。 でも、私は追求の手を緩めない。 「それからこれも。」 そう言って、夫の携帯を夫に見せる。 「そのメールは、このファミレスに行った次の日に届いたメールだよね?」 夫の顔が更に青ざめていく。 頭を抱えて下を向いてしまった。 「変に誤魔化そうとしなくていいから。本当のことを知りたい。教えてよ。」 冷静に。 なるべく動揺しているのを悟られないように。 そう頭の中で言い聞かせていた。 でも私の声はずっと震えていた。 夫の口から聞いたことしか信じない。 ここまで証拠を並べられてもまだ、これは何かの間違いかもしれないと、願っていた。 本当のことを知りたいと言いながら、お願いだから嘘をついてほしいと思っていた。 この悪夢が、現実にならないでほしい。 そう願っていたのに。
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