夕闇エモーション

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 それを僕は美しいと感じた。  血のような空が黒く染まるのを、心地よいと感じた。  映画のラストシーンで、主人公が相棒を殺したのは何故だったのか。それは本当に愛ゆえだったのか。憎しみではなく。  僕にはわからなかった。  ぼんやりしていたら急にスマホが鳴り出したので、僕は我に返り窓をきちんと閉め直す。友人からの着信だった。知っている番号に疑問も持たずに応答ボタンを押してみる。  しかしうんともすんとも言わない。無音である。 「なんだ? 聞こえない」 「……za…za…zaz…a」  なんだか砂のようなノイズが聞こえる。電波の悪いところにいるのだろうか? 不審に思って僕の声は自然と大きくなる。 「おい、どうした?」  やがて電波が良くなったのか、友人の声が僕の耳に届いた。  ──あれからしばらく考えたんだけどな。 「……は?」  ──やはりあれは愛だ。またいつか一緒に映画について語り合おう。 「僕と一緒に行って楽しいか? 受け取り方が全然違うだろ」  ──そこが面白いんじゃないか。じゃあまた、いつか。  友人はそれだけ言うと、通話を切った。  意味がわからなかった。意見の食い違う僕達は映画を観るといつも感想が違う。けれどそこが面白いという友人の存在は、なんとなくありがたかった。けれど思う。いつかと言った友人と、最後に会ったのはいつであったのかと。 「ああ……いつか、か」  君が友人でいてくれて、良かったのだろう。  たとえそれが彼の岸の存在だとしても。またいつか、語り合うのだ。闇に染まった空を見つめながら、僕は誰にも聞こえない声で呟いた。 「……ありがとう」   終
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