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朝焼けだと思ったら夕焼けだったことに、僕はびっくりしていた。
寝る前の最後の記憶は定かでない。昨日何時にベッドに入り、一体何時間眠りについていたのか、まるでわからない。
ベッドから這い出して、西の窓から見える赤く染まった空をはっきりしない頭で眺めるうちに、なんとなく思い出す。
「あぁ……確か映画を」
記憶が少しずつ甦る。
金曜日の夜のことだ。友人と一緒に映画館へ行き、観終わったあとにお互い感想を述べ合った。レイトショーだったため、映画館を出た時にはかなりの夜更けだった。24時間営業のファミレスの一角で二人、議論とも言える話を展開する。
「最後に主人公がああした理由ってなんだったんだろう?」
「愛ゆえじゃないか」
「愛……?」
「愛だろ、愛」
「なんかどっかで聞いたような科白だな」
くだらないやりとりにも思えるが、僕にはそれが愛ゆえの行動とはどうしても思えなかった。そもそも僕には「愛」が理解出来ていない。
けれどそこで黙っておくべきだったのかもしれない。
「愛なんていらなくないか」
「──何故?」
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