夕闇エモーション

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「あそこで愛を持ち出されても困惑しかない」 「そうか?」  友人は眉をひそめ、先ほどドリンクバーで調合した謎ドリンクを口にした。ドリンクはまるで夕暮れのようなグラデーションを作り、色鮮やかでとても美しかった。友人はそれを“サンセット”と名付けていた。 「綺麗だろう。お前も飲むか。愛について語ろう」 「いらない」 「じゃあいいわ。お前変なところで頑なだな。だったら聞くけど、あの映画でどの辺がお前の心に刺さったのか、聞こうじゃないか」 「刺さるとは」 「印象に残ったとか、感動した、とかあるだろ」  友人は少しそっぽを向いて、“サンセット”の入ったグラスをぐるりと回した。遠心力で中の液体が混ざり、夕焼けは闇夜へと変わる。その様子に、僕は惹かれた。いつか見た空の変化。それは僕の心をかき乱した。 「空の色……」 「ああ、確かに印象的な空だったな。他には」 「主人公が相棒を殺すシーン」 「まあ、あれがないと話に盛り上がりがないな」 「でも、人が死ぬのは悲しい」 「いずれ人は死ぬ。そしてあれは映画だ」
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