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7話:歌うハリボテの偶像
「死夢さん……は、もう当時のグループは辞めたんですよね」
名前通りの印象よりもイカついアイドルを目に、恐る恐る敬語で話す。
「そっすね。でも、今も死夢 苦楽闇の名前でやってますね。事務所の絡みとかあって死んで無になる、の死無に漢字を変えないといけないかなって思った時期もあったんすけど、結局この名前でやれてます」
「本名は陽子ちゃんですけどね」
朱音がボソっと言う。
「ちょ、言うなし!」
「明るい名前なのに」
「いや、だからなんよ。陽子だから暗子にしようとかリーダーが言うからさ……折れて折れて結果シムクラヤミ……」
「あ、うん。それで今日朱音さんから紹介してもらう事になった理由っていうのは……」
「まあまあ海野パイセン、ウチも喉乾いたんでちょっと失礼」
そう言うと、苦楽闇は朱音の隣に座り、レモンスカッシュをオーダーした。
「陽子ちゃんがコーヒー飲めたなら海野さんの友達のやってる店に呼びたかったんだけど」
「さーせんね、ガキで。朱音さんよりは年上ですけど」
「えっ、そうなの」
「芸歴は全然朱音さんの方が上なんで、さん付けっす」
見た目の社会性無視というルックスとは裏腹にそういうところはきちんとしてるんだと感心する。
「えーっと、苦楽闇さん……って呼ぶのしんどいな……」
「シムでいいっすよ」
「シムっていうのもな……」
「じゃあクラちゃんにしますか。可愛いし」
「朱音さんそれやめてっす!ウチはこのダークな……」
苦楽闇が言い淀む。
「この作られた闇属性っていうのは、いつまで引っ張ればいいんすかね」
ストローをくわえながら呟く。
「あ、それはそれとして、ふたりはどうして仲良くなったの?フェスの時は苦楽闇さんがオーロラカードを煽っていたんだよね」
「ああ、あれは言われてやってただけっす。本当に炎上で名前を知られる為だけにやったんす」
「言われてっていうのは……」
「当時自分がいたぶっ壊れパソコンモニターっていうグループは、あの時はまだ事務所とか入ってなくて、だからセルフプロデュースだったんすよ。その方針を決めたのがリーダーのデュラ・ハンさんで……あ、ちなみに名前の由来は名字は半沢さんなんで、ハンを取ってデュラ・ハンなんす」
なるほど。まさしく陽子だから暗子とか言いそうな雰囲気のあるリーダーだ。
「ちなみにぶっ壊れパソコンモニターっていうグループ名は自分達で宣材撮るときに原っぱで壊れたモニターが落ちてたのを見たリーダーが、なんか良くない?って言ってそこで撮ったから名前までそれになって、でもウチらメンバー全体で名前の意味がよく分からないって言い続けて、アイ・ラボに出た翌年くらいにAll Killer No Fillerに名前変わりました」
「カッコよ!なんか急にカッコよ!」
「リーダーが好きなバンドのアルバムの名前みたいっす」
会った事もないが、なんだかデュラ・ハンという人が色々と安直すぎないかと不安になった。
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