1話:コイツ嫌い!とわざわざニュース記事に書き込む心理は実は好きと認定する事で中傷をなぁなぁで済ます世の中。

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1話:コイツ嫌い!とわざわざニュース記事に書き込む心理は実は好きと認定する事で中傷をなぁなぁで済ます世の中。

日々がカラッカラに渇いた、人との付き合いも希薄で、間もなく三十路の男。そんな男の前に、マスク越しにも分かる美しさを持った女性が唐突に登場し、好意的に接してくれる。 そんな事、あるはずはない。こちらがスマートフォンと間違えて、実際には持ってもいない札束をポケットから取り出しておっと、とわざとらしく驚くような動作なんかしていない。時計もスポーツウォッチで、着ている服もお手頃なブランドのシャツだ。むしろ、同年代と比べれば服装に気を使えていない方だと自覚している。 それなのに、声を掛けてきたその女性が、更に言えばよくテレビに出ていたアイドルグループに所属している子レベルの美貌だとしたらどうだろうか。あり得ないの倍付けだ。 まさかのそのアイドル本人だとしたら。とんでもない話だ。 そこにとどめを刺すように、彼女が周りを少し気にするようにしてから小声で突然、 「処刑してやりたい人がいるんです、協力してください」 と言ったらどうだろうか。そんなありえない事のオンパレードが、俺のマイペースな日々を一気に彩ったのだった。いや、砕いたと言った方が正確かもしれない。
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