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その頃、母から頻繁に電話やメールが来るようになった。
内容は他愛もないものばかりだったが、気持ちは伝わってきた。
同窓生が自殺してしまった。いつ自分の息子もちょっとしたきっかけでそういう選択をするか分からない。そんな不安があるのだろう。
川崎の死を聞いた数日間のように、眠るときにモヤモヤと生きる事、死ぬ事を考えるようになった。
好きだったミュージシャンが突然死したニュースを思い出す。
事故か自殺か、それが分からなかったが、どうして才能ある人がこんなに早くこの世を去ってしまったのか、としばらく考えていた。
「海野、うす」
大学の中庭を歩いている時に声を掛けられた。
「おつ」
「おつ」
宇木だった。
そういえば、大学に通って授業を受けるだけなのにサークル仲間たちともやたら「お疲れ」という言葉を掛け合う事が多い。このまま社会に出ても「お疲れ様です」を連呼するようになり、もはや自分が疲れているのかどうなのかも忘れていくのかな、なんて意味のない事をたまに考える。
「どうよ、例の件」
声のトーンをわざとらしく落としながら訊いてくる。
「川崎の?」
「そ」
「ん-、あのさ、気になったんだけどどうして宇木はそんなに気にしてるんだ?」
「は……?友達がどうして、その……ってのを気にするのが『そんなに』なのかよ」
死、という単語を口にしなかったものの、語気が少し荒くなっている。
「だったら自分で調べればいいんじゃないかって」
「のよぉ……」
言葉を詰まらせる。
「宇木、すまん。喧嘩したいわけじゃない」
キャンパスを通過する学生が数名、チラチラこちらを見ながら歩くのを横目で見ないようにしながら、
「なんかあったから宇木も気にするんだろ?俺がサークルでPCいじってるから真実を見つけられるかも、なんてめちゃくちゃな理屈だと思ってたからさ」
「……ちょっと、学食寄る時間あるか?」
「実は、俺の彼女があのレンタルビデオ屋でバイトしてたんだ」
「彼女いたのか」
「うん。でもさ、最近一方的に別れを切り出されて、それでバイト先に顔を出してもずっと休んでるっていうんで会えないんだよ。
その、別れようってメールが来たのがちょうど川崎が死んだあとくらいで……」
「何か関係あるかもって?」
「それだけじゃなくて、バイト先の男連中の悪ふざけがムカつく、とか話していた時期があったんだ。何か関係あるなじゃないかと思って」
ピンときた。あの動画の事なのではないか。
となると……。
「もしかして、川崎を殺そうとしていた人間って……」
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