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「もう、なんとなく分かったよね」
目の前の朱音が少し前から眉をひそめているのを見て、直観的にそう言ってみた。
「その同級生の方が亡くなった原因は多分、バイトテロですよね……」
「そう。今でいうバイトテロって、当時はそんな言葉がなかったんだけど、そりゃ当然だよね。すぐに全世界から投稿にアクセスできるようなSNSが発達する前の話だったから」
バイトテロは昨今の社会問題のひとつだが、人目に触れていないだけでもしかしたら昔から横行していたのだろう。
「でも、それで亡くなったっていうのは……」
「勿論今みたいに変な動画が拡散されて顔が割れて会社……バイト先の会社から損害賠償金を請求された、とかになったらニュースになっていたと思う。
だけど、川崎はネットの中につい放り込んでしまったものが、取り返しのつかないものだったという重圧に耐えきれなかったんだと思う」
「デジタル・タトゥーですね」
「うん」
ミルクも入っていないブラックコーヒーなのに意味なくカップの中身を少し揺らす。
「宇木っていう同級生の彼女が川崎に言ったみたいなんだ。こんなのすぐネットで広がる。そうしたら就職活動をするときにきっとバレるって。
あの頃はまだ個人のSNSを事前にチェックする、みたいな流れはなかったから、多分ただの脅しのつもりだったんだと思う」
「でもそれが川崎さんには響いた……」
「亡くなった時に、自分探しをしているとかっていう話が聞こえたんで、後から笈沼に聞いたらどうやら休学してどっかの国に行って、果樹園に住み込みでしばらく働きたいとかって店長に給与の前借りを相談していたらしいんだ。
まあ勿論、正規雇用でもないし給料が固定なわけでもないから断られたらしいけど」
「……」
「あの頃、将来の事を考えて川崎はノイローゼ気味だったらしい。
一回自分の環境をリフレッシュさせるために自分探しの渡航をしたかったのかもしれないけど、そんな中でストレスで変な投稿をしてしまったのかもしれない」
「それで自殺を……?」
「その投稿した動画、他の店員が映っていた映像で、川崎は撮る側だった。
つまり、川崎は投稿した側なのにもし本当に動画が拡散された場合、同僚だけがひどい目に遭い、カメラマンの自分自身は共犯なのに正体を知られずに済む可能性が高い。
その罪悪感と、それを投稿してしまった自分への被写体の同僚から恨まれるかもしれない未来を想像して、殺されると言ったんじゃないかな」
「結局真相はどうだったんですか」
「分からない、が真相」
「……え?」
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