ペカンナッツチョコレートの月 8日

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ペカンナッツチョコレートの月 8日

ペカンナッツの月に なると、にいちゃんは、まいばん、にんげんかいに おつかいに行く。 おとおさんの おてつだいだ。 『さんたろー』から プレゼントをもらえるのは、よいこ だけなので、それなので、よいこを 見つけに行く おてつだいなのだ。 それで、よいこを見つけたら、『よいこの りすと』に なまえをかくのが おてつだいなのだ です。 『さんたろー』は、『よいこの りすと』を見ながら、クリスマスいぶに、プレゼントをくばるのです。 それなので、せかいじゅうの こどもの おうちを いっけんいっけん まわって、よいこか どうか しらべなきゃならないので、にいちゃんは、すごく いそがしい。 きょうは、ガブリエル先生が、いっぱい しくだいを 出した。 『ニゲル』の お花には、花びらが なんまい ついてるかとか、『ヒイラギ虫』は どんな エサが だいすきか とか。 ほかにも、よみかきとか、さんすうの もんだいとか、いーっぱい、しくだいが あった。 それなので、オレは、にいちゃんに しくだいの こたえを おしえてもらおうとしたのだけれど、にいちゃんは、 「『ニゲル』の お花なら、『マデロンこうげん』に いっぱい さいてるから、じぶんの目で ちゃんと見て、たしかめてくるといい。『ヒイラギ虫』のエサのことは、ミトラ村の そんちょうさんに きいてごらん。『ヒイラギ虫』は 『ミトラとうげ』の森に たくさんいるし、ミトラ村にすんでる ベルグフォルク族は、みんな、たいそうな ものしりだから。あしたは 学校がお休みだから、ゆっくり じかんをかけて しくだいを かたづけられるじゃないか」 と、ゆって、さっさと きがえをはじめた。 さんた族が にんげんかいに 行くときは、あかい コートをきて、あかいズボンを はいて、あかい ぼうしをかぶるのだ です。 あかい ふくをきてるときの さんた族は、にんげんから すがたが 見えなくなるからだ。 オレは、にいちゃんの 手を ぐいぐい ひっぱって、 「でも、にいちゃんが おしえてくれれば、すぐに しくだいが かたづくのだ。そうしたら、あしたのお休みは、クレドのおうちに あそびに行けるのだもの、オレは」 と、ゆった。 そうしたら、にいちゃんは、ちょっと おっかない顔をして、 「だったら、あした、クレドと いっしょに しくだいをやったらいいじゃないか。ぼくは、これから、すぐに にんげんかいに 行かなきゃならないんだよ。クリスマスいぶまでに ぜんいんの こどもの ところを まわらなきゃいけないから、大いそがしなんだ」 と、ゆった。 それなので、オレは、「ちぇっ」と、ゆって、ゆかに おしりをペッタリついて、しゃがんだ。 それで、 「にいちゃんの けちんぼ!」と、ゆった。 それだけど、にいちゃんは、きこえないふりをして、すました顔で、あかいふくを きた。 オレは、「ぷーっ」とホッペタをふくらまして、にいちゃんの まえに たった。 それで、もういっかい「にいちゃんの けちんぼ!」と ゆおうと おもったのだけれど、オレは、きゅうに、いいことをおもいついたのだ。 それなので、 「オレも、にいちゃんと いっしょに、つれてって! オレも、にんげんかいの こどもの ところに、行きたいのだ」 と、おねがいした。 オレは、まだ、いちども、にんげんかいに 行ったことがないのだもの。 それだけど、にいちゃんは、つーんと よこを向いて、 「ダメだよ。にいちゃんは、だいじな おしごとをしに行くんだから。おまえみたいなチビをつれてったら、あしでまといだ」 と、ゆって、お月さまみたいな ぎん色の かみの毛の上に、あかい ほわほわの さんかくぼうしをかぶった。 オレは、かっかと おこって 「オレは、チビじゃないぞー!」 と、ゆって、にいちゃんの となりに ならんだ。 にいちゃんは、オレの頭の上を 手のひらで「ぐい」と おさえつけて、 「ほら。そんなに めいっぱい つま先立ちで せのびしたって、やっと ぼくの こしの高さに とどくくらいじゃないか。おチビさん」 と、ゆって、ハハハと わらった。 オレは、「ぎゅうっ」と 下の くちびるを かんだ。 すごく くやしくて、かっかとして、それに、目のところが どんどん あつくなった。 そうしたら、にいちゃんは、オレの目のまえの ゆかに ヒザをつけて しゃがんで、 「おまえは、ほんとうに、まけずぎらいなんだなー。まったく」 と、ゆって、オレの かみの毛を くしゃくしゃと 手で かきまぜた。 “まけずぎらい”と ゆうのは、まけるのが きらいな ことなのだ。 それだから、とても おとこらしくて かっこいいとゆう ことなのだと おもう。 オレは、“まけずぎらい”と ゆわれて、ほめられたので、うれしくなったので、目の上をごしごし 手のひらで こすって、「へへへー」と わらった。 そうしたら、にいちゃんも、『オーロラみさき』の海の色みたく きれいな 青い目を ほそくして、うれしそうに ニコッと わらった。
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