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地上に落ちた牛
ウシと子供は天の川から落ちているうちに離れ離れになってしまっていました。運よく牛は小島の近くの海に落ちたので、島を目指して泳いでいってみると、そこには鳥居があって階段を通って登っていくと神社がありました。
牛は天の牛だったので、神社の入り口にいる狛犬たちに挨拶すると狛犬たちが神様に取り次いでくれた。
「ほぉほぉ、彦星さんのところの牛が。天の川から落ちてしまったと。ふむふむ。それはそれは、お困りでしょう。」
「ええ、なんとか帰れるようにしていただけませんか。それから、近くに彦星さんの子供も落ちてきたと思うのですが。」
「おやおや、彦星さんのお子まで。それはそれは。いや、私はこの島の砂浜までのことしか分かりませんでなあ。ちょっとお待ちくださいよ。」
なかなか気さくな神様で、手をぽんぽんと打つとお社の上に艶々と黒光りするカラスが降りてきた。
「このものに探させますでな。あなたはここでお待ちになってください。」
「いえ、私が耳の中に入ったアブなんぞに気を取られなければ、彦星様のお子様を天から落とすようなことには。私も探しに行きます。」
「しかし、その姿では・・・。」
「牛なんぞ、足手まといだよ。」カラスがずけずけという。
「ではお前に彦星様のお子が分かるのか。」
「ふん、どっかから落ちてきた子供がいないか、聞いて回るだけさ。天から落ちてきたんなら、人間の子供とは違うだろうよ。」
「分かったとしても、お前がここまで連れてくるわけにはいかないだろう。」
カラスと牛が言い争うのに神様が割って入った。
「まてまて。けんかをするんじゃない。そうだ、お前はこの中に入っていくがいい。」そう言ってひもを通してある水晶玉を懐から出した。
「この玉から出たいと思えば、玉は割れて外に出られる。ただし出てしまったら、中には戻れない。くれぐれも、気をつけていくんだよ。」
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