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地上に落ちた子供
一方、牛の背中に乗っていた子供は落ちていく途中で、どういうわけか段々と体が縮んでしまっていた。おかげで、風に乗ってふわふわと地上に降りれたのだが、見知らぬところで独りぼっちなのが怖くてめそめそと泣いていた。
「おとうさま、おかあさま、こわいよぉ。」
そこにカエルがやってきた。ぬらぬらして生臭いようなにおいがするので
顔をあげると、大きな目玉がこっちを見ているので余計にびっくりしてわあわあ泣きながら逃げようとすると、今度はシュルシュルという音がして
ちろちろと赤い舌ベラを出しながら近づいてくる長い丸太のような生き物が来て、カエルを飲みこもうとした。
カエルが気が付いて逃げようとしたときには、蛇があっという間に体を伸ばしてぱくんとカエルを飲みこんで、また舌ベラをチラチラと動かしながらシュルシュルと草の陰に消えてしまった。
そんなところを初めてみたので、あまりに驚いて声も出なかった。ふぅっと足から力が抜けてペタっと座り込んだのは覚えているけど、そのあとどうやら気を失っていたみたいだった。ふと目を開けると、すっかり空は暗くなり空には星がキラキラと瞬いていた。
「きれい・・・。」
星に見とれていると、近くに大きな光るものが来た。ふわーっと明るくなっては暗くなる、不思議な光。
「あなたはお星さまなの?」
思わずつぶやいてみると、なんと明るい光の向こうから声がした。
「あはは。だれだい、ぼくをお星さまだなんていうのは。」
それは星ではなかった。
「あ、あの、わたし上から落ちてきて、ここのこと何も知らないの。」
おずおずと答えると楽しそうに返事が来た。
「ぼくはね、蛍っていうんだ。虫だよ。きみは?」
「え、わたし?わたしは・・・天の川の近くに住んでる織姫と彦星のこども、カヤと申します。よろしくね。」
「へぇー、そうなんだ。キミのほうが星みたいなもんじゃないか。」
「そ、そう?」
「で、なんでこんなところにいるんだい?」
「それは・・・」
わけを話そうとしたところで、蛍はふわっと風に乗って行ってしまった。
「あ、まってー。」
せっかく話ができると思ったのに、また独りぼっちになってしまった。あたりは暗闇、さっきまで明るい蛍の近くにいたから、一層くらさが体に染み込んできそうだった。
「ああ、どうしよう。こんなに暗いところに一人なんて。」
途方に暮れていた時だった。キラキラ光る星が黒い影にさえぎられて、その影がどんどん近づいてくるようだった。一体、今度は何がくるんだろう。恐ろしくなって、どこかに隠れようとしたけど足がもつれてバッタリと転んでしまった。風が巻き起こってバサバサという音が聞こえたけれど、怖くて顔をあげることもできなかった。
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