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蛍池
カラスは蛍池の上を飛んでいた。周りは暗くなっていたが、神様のお使いのカラスは暗くても平気だった。それに蛍が光っているので、それほど暗くもなかった。牛はこのあたりだということだけは分かるようだったけれども、それ以上はよくわからなかった。
「おい、この辺なのか?」
「ああ、このあたりからカヤ様の声が聞こえる。」
「お前の声はカヤ様には聞こえないのか。」
「どうだろう。カヤ様と話をしたことは無いんだ。」
「ふーーん。そうなのか。」
「天にいるときは、話ができるなんて思ってもいなかったしな。」
「変わってるな、天にいる奴らは。」
そういいながらカラスは蛍池の近くに生えている木にとまった。
「おーい、この辺で天から落ちてきた子を知らないか?」
カラスが叫ぶと蛍たちが集まってきた。
「天から落ちてきた子?」
「知らないなあ。」
そんな中、一匹の蛍が首をかしげながら飛んできた。
「なんか変なのがいたけど、俺より小さかったしなあ。」
「変なの?」
「ああ、なんか知らないけど見たことがないやつ。俺の事、お星さまかって言ってたし。上から落ちてきたって・・・」
「どこなんだ、それっっ。」
カラスと牛が声を合わせてその蛍に詰め寄ったのに恐れをなして、蛍は気を失ってしまった。周りの蛍たちが、あわてて介抱したもののなかなか気が付かない。
「あの、カラス様。このものは池のはずれのほうにいるやつです。きっとそちらのほうではないかと・・・。」
「わかった。そっちに案内しろ。」
「あ、は、はい。」
「ああ、カヤ様。早く見つけないと、きっと怖くて泣いてます。」
ようやく気が付いた蛍がぼんやりとした声で
「ああ、なんか泣いてたかも。」
なんでいうものだから、それを聞くと牛はいてもたってもいられなくなった。
「はやく、カヤ様のところに行かないとっっ。」
「じゃあ案内してもらおうか。」
「カヤ様ー、いま行きますからね。泣かないでくださいー。」
「うるさいぞ、牛。」
カラスは蛍を水晶に止まらせて、いつもいるという場所に連れて行った。
「ああ、カヤ様があそこにいます。」
「見えるのか。」
「あの草むらのところにうずくまってるのがカヤ様です。」
「えらくちっちゃいな。いつもあんなに小さいのか?」
「いつもはもっと大きいんですけどねぇ。」
「まあいいや。とにかく連れて帰るぞ。」
蛍の案内で無事にカヤ様を見つけて牛はほっとした。
「カヤ様、カヤ様、牛でございます。一緒に天に帰りましょう。」
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