SIDE: トニー・チャイコフスキー

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SIDE: トニー・チャイコフスキー

 なんということだ!  俺ひとり、非常事態で叩き起こされた。  コクピットのモニターを見て、震えが止まらない。 『隕石(いんせき)群が船体に多数衝突。 第2客室から第30客室(最後尾)まで船体に隕石衝突による多数の穴。 船体損壊部の穴は自動修復済み。 宇宙船の運航に関する機能は異常なし。 該当客室の生命維持装置作動不能。 該当客室に生存者なし』  要するに助かったのは第1客室だけか……  地球で、未知のウイルス感染症が蔓延(まんえん)して、バタバタと人が死に、人類は滅亡すると言う予測が出た。治療薬もワクチンも開発が追いつかないほどのスピードで広がった。  結局、多くの地球人を見捨てて、地球連邦政府の偉い人たちとそれを支えるお金持ちたちだけが、宇宙船で新たな星へと逃亡した。  俺は政治家でも金持ちでもないが、この最新型宇宙船のクルーということで、命が救われた。  そう思ったのも束の間、この事態だ。  この宇宙船の人間は、みんな人工冬眠している。起きて生活していたら食料も酸素も大量にいる。冬眠していれば最低限でいい。人間の持つQ神経(休眠誘導神経)を化学物質CNOで刺激することにより冬眠状態にし、酸素の消費量などの代謝も大幅に低下させる。  第1客室とこのコクピット〜第2操縦室のみが生き残った。生存者は大統領を含めて50人。今も光を超える速度でのワープ航行を繰り返していて、移動自体には問題はないし、離着陸も可能だ。 「問題なのは、栄養が足りなくなると言うことか……」  問題なのは、生命維持のための高カロリー輸液が偶数客室部分にあったと言うことだ。第1、第2客室部分は、第1客室部分で酸素の合成をして供給し、第2客室部分で栄養となる輸液を合成していた。
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