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「すごい! かっこいい! 僕もおじさんみたいに宇宙船を運転したい。宇宙船の運転手さんになりたい」
まいったな。大統領になるとか言うと思ったが。いい気分にさせられた。
そうだ……俺はあることを思いつき、操作板を動かしてデータを見る。10歳以下の子は10人か……
俺は、10歳以下の子供だけに酸素と輸液を与える設定に変更した。1か月後から。
真顔で操作画面を覗いていたトニーは、俺が振り向いたことに気づくとニコリと笑った。
「おじさん、やっぱり、かっこいい!」
無邪気な子供はいい。今何が起きているかなんてわからないから。
子供なら、このちっこさだから、1人分の輸液は少量で済むし、人数も少ないので、かなり長い年月、大丈夫だ。それに、子供たちには、年寄りと違って未来がある。
この設定で、大人たちは死ぬ。死ねば、人工冬眠カプセルは宇宙船から自動で射出され、宇宙葬がなされるシステムだ。
妻と子供の顔が頭に浮かび、瞬間、また、瞳に涙が溢れた。
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