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俺もあと1か月の命か……
1か月後に設定したのは、苦痛を味わいたくないからだ。今すぐ作動させたら、俺は酸素のないカプセルに戻ることになる。1か月後なら完全に熟睡状態で安楽死できる。
俺は涙を拭きトニーを見る。
「トニー・グリーン、お部屋に帰るよ」
「うん。連れてって」
コクピットを出る時にふと思った。この子はなぜドアの暗証番号を知っていたんだ? しかし、すぐに薄笑いを浮かべる……大統領権限か……なんでもありだな。
トニーが、不思議そうな顔で俺をみる。子供に罪はない。
俺はトニーをカプセルに入れた。
「おやすみ、トニー」
俺はトニーのプニプニした頬を撫でた。
「おやすみ。おじさん、いい夢見てね」
「ああ」
そうは言ったが、いい夢など見れるわけはない。寝れば死ぬのだとわかっていて……
おやすみじゃなくて、さよならの方が正しかったのだろうな。
俺は自分のカプセルに入った。これでいいんだ。妻と子は、きっとすでに死んでいる。すぐ会えるんだと笑みを浮かべ、自分のカプセルを閉じた。
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