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「ぅおっ」
途端、急に何かが身体に乗った。
お、重い。
確かな重みを上半身に感じた瞬間に、馬乗りになったソレの熱い舌にベロベロと口を舐められた。
「だめ!」
急にはっきりとした声が響いて、一瞬で頭の中の花が消えた。気がつけば、もじゃるまるの顔が目の前にあり、俺の口元を舐めている。
……い、犬臭い。
肘を上げて口を拭った。
「モジャかよぅ」
ペロペロしてくるモジャを押しのけながら、リビングに居るだろう飼い主を呼ぶ。
「はなぁー!」
クスクスと笑い声が案外近くのドアの方から聞こえた。
少し身体を起こせば、花は俺の部屋の入口に立って、こっちを見て笑っていた。
「居たのか。モジャ、どかして」
「だって、けんちゃんのお部屋、入ったらダメでしょう?」
言いながらもモジャに潰されている俺を見て、ケラケラ笑っている。
「モジャ、だめだよ。おいで」
と英語のコマンドで呼びつける。
モジャはくるりと振り返ると、ドンっとベットから飛び跳ねて、「良い子」と花に褒められながら部屋を出ていった。
……どこがいい子だ。
何だよ、朝から。
あんな夢、本当に身体に悪い。
しかも耳と頬が犬の唾液で濡れている。
はあー。
掌で、顔を擦りながら、夢の残像を身体から追い出すように、思いっきり溜息を吐く。
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