*けん* 妹は同居人

4/28
前へ
/257ページ
次へ
 ルームウェアでリビングに行くと、モジャがマットから起き上がって、寄ってきた。 「おはよう」 さっきはイラッとしたけど、悪気もない犬だ。 くしゃくしゃっと、もじゃもじゃの頭の茶色の毛をいじる。 「けんちゃん。おはよ。コーヒー飲む?」 キッチンから花が声をかけてくれるけど、朝からあんな変な夢を見てしまって、花の目がまともに見れない。 「ん。あれば」 ダイニングテーブルに携帯を置いて、キッチンへ回ると、 「うん。今、淹れたとこ」 と、フィルターコーヒーをマグについで渡してくれる。 「ありがと」 何食わぬ顔で、テーブルにつくと、携帯で天気とニュースをチェックする。 「けんちゃん、昨日、遅かったね」 「んー。接待」 会議続きの後に取引先の接待。 綺麗なお姉さん方のいる店までご一緒して、2時過ぎに帰った。 それで、酔っ払って部屋のドアをちゃんと閉めてなかったらしい。 「そっか。モジャが起こしてごめんね」 モジャ事、もじゃるまるは、この娘、花の犬だ。 高校生の頃、帰国子女で日本に慣れない花を心配して、この娘の母親が飼うことにしたという、ラブラドールレトリバーとプードルのミックス犬で、もじゃもじゃの毛の大きな熊のぬいぐるみの様な大型犬だ。 「んー」 そういえば、さっき花はいつから俺を見ていたのか? 変な寝言を言っていないといい。夢の細かい内容なんて起きてすぐ忘れてしまうのだけれど、微かに残る甘い雰囲気からして、かなりヤバい夢だった気がする。 コーヒー片手に、すでに携帯を見ている花の顔色を伺っても、分からない。 すごい罪悪感。 14も年下の妹の夢を見た。
/257ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1249人が本棚に入れています
本棚に追加