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ルームウェアでリビングに行くと、モジャがマットから起き上がって、寄ってきた。
「おはよう」
さっきはイラッとしたけど、悪気もない犬だ。
くしゃくしゃっと、もじゃもじゃの頭の茶色の毛をいじる。
「けんちゃん。おはよ。コーヒー飲む?」
キッチンから花が声をかけてくれるけど、朝からあんな変な夢を見てしまって、花の目がまともに見れない。
「ん。あれば」
ダイニングテーブルに携帯を置いて、キッチンへ回ると、
「うん。今、淹れたとこ」
と、フィルターコーヒーをマグについで渡してくれる。
「ありがと」
何食わぬ顔で、テーブルにつくと、携帯で天気とニュースをチェックする。
「けんちゃん、昨日、遅かったね」
「んー。接待」
会議続きの後に取引先の接待。
綺麗なお姉さん方のいる店までご一緒して、2時過ぎに帰った。
それで、酔っ払って部屋のドアをちゃんと閉めてなかったらしい。
「そっか。モジャが起こしてごめんね」
モジャ事、もじゃるまるは、この娘、花の犬だ。
高校生の頃、帰国子女で日本に慣れない花を心配して、この娘の母親が飼うことにしたという、ラブラドールレトリバーとプードルのミックス犬で、もじゃもじゃの毛の大きな熊のぬいぐるみの様な大型犬だ。
「んー」
そういえば、さっき花はいつから俺を見ていたのか?
変な寝言を言っていないといい。夢の細かい内容なんて起きてすぐ忘れてしまうのだけれど、微かに残る甘い雰囲気からして、かなりヤバい夢だった気がする。
コーヒー片手に、すでに携帯を見ている花の顔色を伺っても、分からない。
すごい罪悪感。
14も年下の妹の夢を見た。
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