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花は5年前に俺の妹になった。
還暦間近の父が誰かと付き合っているのは知っていた。それが最後の海外赴任を期に、再婚すると言い出して、花の母親と大学三年だった花を紹介された。
呼び出されて、ホテルのレストランへ行くと、スーツ姿の父が秘書の女性と笑っていた。前に秘書だと紹介されていた四十代後半のその人が、再婚相手と知って驚きもしなかった。
一度、なにかの機会で、顔を合わせたことがある。綺麗な顔だちの女性で、ハーフだと言っていた。あの時から、すでに、特別な関係だったんだと思う。
驚いたのは、テーブルについて、しばらくしたら、カジュアルな格好の女子大生がレストランに駆け足で入って来てからだった。
「ママ、ごめん。遅れた」
ペコリと父に頭を下げて、こっちを見た。
「ごめんなさい」
茶色の緩く巻いた髪。
天然パーマだと、後で知る。
「花、地図見てたんだけど、間違えた」
走って来たのか、頬が紅い。
少し乱れた髪の毛を直しながら、席に着いた。
『花』
自分の事を名前呼び。
「花ちゃん、良いよ、健太郎も今来たとこだし」
父が柔らかい口調で俺をダシにして話し始めた。
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