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この年末年始、帰って来た両親にホテルに食事会に呼びつけられた。
そこで花のシェアハウスの話題になった。
「オーナーがニュージーに行くんだよ」
「どうするのよ、花。新しい所、すぐ見つかりそう?」
母親の京子さんに聞かれて、花が口を尖らせている。
「んー。今のところ、気に入ってたのに。モジャに丁度良かったし」
花が犬を飼っているのは知っている。オーナーさんのご厚意で、みんなに可愛がられていて、助かると聞いていた。
「家からは通えないか? 遠くて」と父が口を挟むけれど、父の家のある神奈川のあの市からでは、この子には無理だろう。通勤に時間がかかりすぎて犬だって、一日どうするんだ。
「ペット可のマンションにすれば?」
京子さんの提案に花が「だって、モジャ、ずっと一人だと可哀想。昼、walker、頼んだら、家賃だって、花のお給料じゃ厳しい」と嘆いている。
「ママ、いいよ。もうちょっとシェアハウス探す」
そういいながら、フィレ肉を食べていた。
ペット可か。
なんか、風向きが、やばい。
「いざとなったら、健太郎。お前、ペット可だろ、2LDKだし、部屋開いてるんだろ?」
父は急に出来たこの妹に甘い。
常日頃、同じ会社なんだから、ちゃんと面倒を見ろ、とか電話で言ってくる。
お互い、自分の面倒を見れる位、大人ですけどね。
「ん、はい。もし、必要だったら、どうぞ。ペット可です」
「わぁ。いいじゃない。良かったわね」
と京子さんが決めてしまった。
必要なら、って言ったけど。
「けんちゃん、いいの?」
申し訳ないという風に、花が聞いてくる。
「あー。いいよ。うちで良かったら、おいで」
馬鹿だ。
俺は、花の「けんちゃん」に弱い。
5年前、紹介されて直ぐに「お兄さんは恥ずかしいから、けんちゃんにするね」と言われて、年甲斐もなくドキッとした。
馬鹿だ。
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