*ケン* 夢見せて

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「あれは、どういう意味だ?」 ちらっと花を見れば、ママさんが声を低くしてあっちにも事情を聞いている。 「健太郎?」 父が眉をひそめた。 「あー、花と付き合ってる」 父にこういう話をするのは、気まずい。 「バカか、お前は!」 反射神経的に叱られた。 父に怒られるのはいつぶりだろうか。 「スミマセン。けど、ふざけてるわけじゃないんで」 「お前、いい歳して」 14も下の子に手を出して? 妹に手を出して? 「いい歳して、なんですか?」 いい歳して、15,16年下の京子さんに手を出したのは父だ。 秘書に手を出した人に言われたくない。 半笑いの俺の言いたい事に気がついたらしい父は嫌そうな顔をした。 「お前……。お前、どういうつもりだ?」 「急ぐつもりはないけれど、本気だから」 ちゃんと付き合ってる。 それ以上を視野に入れながら。 「本気?……そ、そうか。ちゃんと考えているんなら良いけど」 そういうと、父はテーブルに戻った。 「京子、まぁ、血は争えないって言う事かな。君らに弱いんだよ、うちの男は」 父が情けなく笑ってそういった。 確かに。 親子で、この母娘に惚れてる。 「まあ、本当に。健太郎さんが花に落とされるとは思いませんでした」 誂うように笑われた。 「スミマセン。今日、落ち着いたら、ちゃんと話をするつもりだったんですけど」 京子さんに向き直ると、花もぴっと背筋を正した。 「京子さん。花と付き合わせてもらってます。まだ花は若いし、最近の事なんで、急ぐつもりはないですけど、僕は結婚を前提にお付き合いさせてもらいたいと思ってます」 ママさんに頭を下げた。 「まあ」 「ママ。いいよね?」 「それは、二人がそうしたいなら大人ですから、良いけど」 「ご心配かけないように、大事にします」 もう一度、京子さんに頭を下げた。 「花ちゃん、何かあったら、すぐに僕らに言いつけて良いからね」 父が花にそう笑いかけると、花が笑った。 「パパ、大丈夫。けんちゃん、優しいから」 「そうねぇ。健太郎さん、花がわがまま言ったら言いつけて下さい。本当に、びっくりだわぁ」 京子さんが花と俺を交互に見て笑った。
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