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その朝は町じゅうの鐘が鳴った。
秋朝海運の蒸気船が港に入って来る。
京や大阪、越中への荷を下ろし、関東への荷を積んで、明後日には横濱へと戻る。私や桐吾、坂下を乗せ………また戻って行く。
船の汽笛が鐘の音に応え、それに更に応えてまた鐘が鳴り響く。まるでそれは異国の結婚式のようだと思う。
───────……結婚式……
私の恋した人が、私の息子の元へゆく。
決して後戻りはすまい。
了
二幕[https://estar.jp/novels/25852823]へ続く
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