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「わたしっ……告白しますっ」
昼休み。立ち上がって宣言した雪絵に、遥と梨花はカルピスをストローで吸いあげながら
「おーついにか」
「で、いつよ」
と、反応は薄い。毎日雪絵の恋する高橋くんについて聞かされていたからだ。
告白するって今まで50回以上言っていた。結局すべて直前でやめながらとうとう高校生活3年めになってしまった。でも、今回こそは本気っぽさが今までと桁違いだった。
雪絵はまつげをぷるぷる震わせながら言った。顔を真っ赤にして。握られたカルピスがつぶれている。
「お、屋上に呼び出したよっ。今日の放課後」
「今日かいっ」
遥のツッコミに雪絵は深呼吸。先ほどとは一転して、真剣な表情で話し始めた。
「今日で探索が終わりだから……屋上から帰るの」
また始まりましたー。遥と梨花は雪絵にわかるよう、おおげさにため息をついた。
雪絵は最近、不思議ちゃんキャラを演じているのだ。好きな人に告白できないストレスが、「好きな人に注目されるために、不思議ちゃんキャラになる」という行動をさせてしまったのだろうか。
「記憶、戻っちゃった」「わたし、地球進出で事前探索に来た隊員なの」とか。「探索が終わったら、地球の生物ぜんぶ駆除しなきゃだから、今のうちに悔いのない地球生物生活を過ごさないと」とか。
遥と梨花はその話になるたび、テキトーにはいはい、と流していた。
「だから、応援おねがいっ」
雪絵が両手をパンッと合わせウィンクする。まあこれで雪絵の恋が実るにしろ破れるにしろ。何か進展があれば高橋くん語りは少しはおさまるだろうという期待を胸に、ふたりはこっくりとうなずいた。
放課後になり、ふたりは告白現場を、扉の影からこっそり見守った。
梨花がふと、首をかしげた。
「あれ? 雪絵のスカートの下から尻尾みたいの生えてない?」
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