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「タコになっちまえばいいんだ」
少年は言った。
「皆、タコになっちまえばいいんだ!そうすれば、皆何も考えず、何も悩まなくていいんだ!」
人生に思い悩んだ少年はそう言って大学の理学系学部生物系学科を目指し、入学した。
「お前そんな理由でこの大学に入ったんか」
少年が大学に入って出会った、研究室の友人は、そう言った。
「人間がタコになれれば、その技術だけでお前はノーベル賞を取れるよ」
「おうよ!まず俺からタコになってやるぜ!俺がお前も含めて人類みんな救ってやる」
だが少年は、学部に入って八年目、卒論をかき上げられずにいた。友人は既に博士号飛び修得が確定していて、少年は大学中退が確定していた。
「お前、大学辞めて、これからどうするんだ?」
と友人が聞いた。
「ま、俺の中じゃ、満期退学だからな、どうにかなるさ」
なんせ俺は、タコになってみんなをタコにするのが夢だからな、と言って、四回生から在籍した、五年間世話になった研究室を去った。
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