タコになっちまえばいいんだ、みんな

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彼は彼なりに研究を続け、その資金のために大学進学時に借りた奨学金を全額FXにぶち込んで家一個分の冒険をしたり、動画サイトで某政治家の邸宅にピンポンダッシュしてスパチャをもらったりした。彼は裕福であるはずだが、タコの研究は資産を食いつぶしていった。 彼の前に大蛸が現れた。大蛸は彼の資産を狙って、タコにしてやろうと画策していた。彼は、是非とも、と言いそうになったが、ここで乗ったら蛸にしてくれなくなると思い、出来るだけ嫌そうに、 『ご勘弁を~!』 と言いながら、顔をしかめた。 彼は自分がタコになった、と自覚した。前足が視界に入り、それは確信となった。彼は狂喜した。これでなにも悩まずに済むと。彼は他の人類をタコにしてあげられなかったことが心残りだったが、海に飛び込んだ。                * 青年は生物系専攻で博士課程を早期修了したが、ポスドクの任期が切れ、パーマネントの研究職が見つからず、実家のたこ焼き屋で働いていた。
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