タコになっちまえばいいんだ、みんな

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ある朝に届いた蛸はやけに目が輝いている、と青年は思った。しかし蛸を湯がかねばならず、彼は心を痛めながらそれを大鍋にぶち込んだ。蛸は最初、あまりにも悲痛な表情を浮かべたが、すぐに安楽の表情に変わり、大風呂を楽しむかのように見えた。彼はある友人を思い出した。合宿の時、風呂に浸かっている表情に似ていたからだ。彼はすぐさま蛸を引き上げたが、既に茹で上がった。彼は虚無の心で蛸をぶつ切りにし、トレイに入れ、タコ焼き機に生地を流し込み、蛸やその他の具材を入れ、クルクル回して焼き上げた。ふと青年は、 『蛸になりたい』 と思った。焼き上げたタコ焼きを客にサーブした瞬間、研究室に戻ることを心に決めた。
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