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女神様……
「女神様のゴイコウか……」
気づけば俺は、周囲の誰にも聞こえないほどの小声でつぶやいていた。
フゥーっと、俺は初めて大きく息を吐き出した。
そしてまた一人で考える。
女神様の『ご意向』…… 女神様はなぜ俺達をこの世界に招聘したのだろうか?
二度目の人生を与えた対価として、女神様は俺達に命がけで魔人族と戦う役割を求めておられるのだろうか?
もっと言えば、俺達は魔人族を殺すための道具として、女神様から生を与えられたのだろうか?
いや、そんなことは有り得ない。俺はこの世界にやってくる際、女神様と言葉を交わしたのだ。
女神様はとても優しい方だった。そして気高く崇高な方だった。少なくとも俺にはそう感じられた。
では、なぜ俺達はこんな異世界に来てまで殺し合いをしないといけないんだ?
俺は女神様からもらったユニークスキルのおかげで、これまでなんとかこの世界で生き抜くことが出来たと思っている。
でもその代償として、俺はこの先ずっと罪悪感に苛まれながら、前線で戦う若い連中をこうやって見送らなきゃならないのか?
女神様…… あなたはいったい何をお望みなのですか?
「女神様のゴイコウを!!!」
俺は一人、天空へ向け大声で叫んだ。
総攻撃の命令はまだ出ていない。しかし最前線では偶発的な戦闘が始まったようだ。
前線から流れ来る風に乗って、戦場特有の吐き気をもよおす異臭が容赦なく俺に襲いかかる。
これがあなたの、俺の問いに対する答えなのですか……
答えて下さいよ、女神様…………
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