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ユニークスキル
作戦会議は終了した。敵が兵力500を北門に振り分けている間に、我が軍は全軍をもって、南門を守護する敵兵1500を殲滅する作戦がとられた。
この世界には魔法がある。城門を破壊せずに、城兵を攻撃することが可能なのだ。
俺のいる本陣の近くでも、多くの友軍が城郭都市フリーデン目指して進軍を始めるべく準備を開始している。その中には、もちろん転生者の姿も見られた。
俺達転生者は、この世界にやって来るとき、女神様からユニークスキルというものを与えられる。それは剣技に特化したスキルであったり、敏捷性が上がるスキルであったり。そう言えば魔法の威力が通常の3倍になるという、信じられないスキルを持っていたヤツもいたな。
俺が女神様から与えられたスキルは『広域索敵』と『人物鑑定』の二つだ。これまで転生者仲間からは、ハズレスキルだと散々からかわれたっけ。
まあ、36歳でこの世界にやって来た俺にとってはちょうど良かったのかも知れない。若い連中と同じように、血気に逸ってダンジョン攻略なんかに情熱を燃やしていたら、おそらく体力が続かず死んでいただろう。
きっと年寄りに対する女神様なりの配慮なのだろうと思い、笑っていたのだが……
しかし、状況が変わったのだ。
魔人族領への侵攻戦が始まってから、俺が持つスキルの重要性が跳ね上がった。
人間族未踏の地であるここ魔人族領では、どこに敵がいるのか、いやそれ以前に、どこに何があるのか、どこに向かって進めばいいのか…… 知っている者は誰一人としていなかったのだ。
俺が持つ情報収集系のスキルがなければ、我々人間族軍は一歩たりとも動けないと言っても過言ではない。そう、俺は絶対、最後まで生き残らねばならないのだ。
だから俺はいつもこうやって安全な本陣にその身を置き、前線へと向かう同胞達を見送るしかないのだ……
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