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「ん?」
ちょうど洋平がハラミを口の中に放り込んだタイミングで、コソコソと一輝が動き出した。
見るとその手には、肉や野菜が盛り付けられた皿がある。最初は焦がした食材でも捨てるのかと思ったが、盛られた肉や野菜は焦げていない。
不思議に思った洋平はハラミを飲み込むと、一輝の元へ向かう。
「それどうした?」
「えっ? いや……これは」
「……もしかしてあいつらの分か?」
洋平の言うあいつら、とはマガズミたちの事だ。
改めて周りを見てみると、庭でバーベキューを楽しむ彼らを見るように縁側に座ったマガズミとサグキオナの二人が物欲しそうな顔をして彼らを見ていた。
正確には物欲しそうにみているのはマガズミの方だが、サグキオナも心なしかいつものポーカーフェイスの中に、期待に近い何かをうっすらと感じる。
「そこまで気を回さなくてもいいんじゃねえか? 見ろあの顔、早く持ってこいみたいな顔でちょっとムカつくし」
「とはいえさすがに目の前で、俺たちだけ食べるのも悪いかなと」
「……分かった、じゃあ俺が持ってくよ」
「いいのか?」
「ああ、それよりも宇佐美はもっと肉食べとけよ。あんま食べてねえみたいだし」
洋平の言葉に少し驚いたような表情をした後、一輝は嬉し気に小さく口元を緩めてから、彼に肉の乗った皿を頼むと言って手渡した。
彼はそれを受け取り、縁側で待つマガズミたちの元へ向かった。
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