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そして……
「新郎のご入場です」
俺と李音は目を見合わせて、式場に入った。
あのカラオケの日以来、付き合うようになりちょうど二年。
今日はささやかながら式をあげる。
「おめでとう、有斗」
「李音、頑張りなさい」
家族はそう祝福してくれた。
同性愛同士の結婚がようやく認められ、正式に夫夫になれた。
だが、少し特殊な式に呼べるほど心を許せる友達が互いに居ないので家族だけの結婚式だ。
規模こそ小さいが、ずっと心に残り続ける式にしようと思う。
そっと神父さんの前に立った。
「新郎、橋本有斗。あなたはここにいる堀田李音を、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「はい、誓います」
そっと李音の手を取った。
「新郎、堀田李音。あなたはここにいる橋本有斗を、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「はい、誓います!」
「──それでは誓いのキスを」
目を合わせて微笑み、そっと李音に口付けをした。同時に拍手が響き渡った。
気恥ずかしさに顔を赤らめながら頭を下げた。
しばらくして、音楽を流してもらう。この式場はなかなか融通が効くのだ。
もちろん流すのは『marry』と『Me too』だ。
同性婚ということもあり、困難に直面することも多いだろう。
けれど、李音となら、大丈夫だ。
音楽が壮大に鳴り響く。『Me too』のサビに入った。
『あなたと出会えて、わたしは幸せ』
あなた、のところで李音の名前を出した。同時に李音も俺の名を出す。
李音と出会えて、幸せだ。
そっと目を合わせて微笑むと、優しく拍手が響き渡った。
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